産前産後のお母さんやそのご家族へ、出産に関する体験談をお伺いするインタビュー企画。これからお母さんになる方やそのご家族には、不安・悩みも多いと思います。子育ては十人十色ですが、誰かの経験を知ることで選択肢が少しでも増え、悩みの緩和に繋がると思い、先輩たちの実体験をお届けします。

第18回目としてお話を伺ったのは丹後 佳代(たんご かよ)さんです。

丹後さんは大学を卒業後、小学校の先生になり夢を叶えました。その後、保険代理店業・不動産売買業を営む中で、ご主人と共に廃業寸前のタオル工場を引き継がれます。逆境の中、さまざまな挑戦をし続け「しあわせを織りなす」という意味を込めたオリジナルブランドOLSIA(オルシア)を展開されています。

1部では不妊治療経験、2部では子育てと仕事との関係についてお話を伺いました。3部はこれからとして丹後さんのお言葉をお届けしています。丹後さんはお子様に注意する時、大事な3つの理由があると教えてくれました。その理由とは。


<プロフィール>
丹後 佳代<Kayo Tango>
愛媛県出身、在住。兵庫教育大学 学校教育学部を卒業後、長年の夢であった小学校教諭として従事。その後、保険代理店業・不動産売買業に携わる中、廃業寸前のタオル工場を旦那さんと引き継ぐ事を決意。知識ゼロ経験ゼロ、取引先もほぼゼロ売上ゼロの状態からスタートさせる。オリジナルタオルブランド「OLSIA」を立ち上げ、展開中。その他、講演会やよみきかせ活動などでも活躍されている。 プライベートでは2児の母。




第3部:これから

子どもを通して学べる事

大切な3つの理由





森山:これまで多くの方と接してこられた丹後さんですが、これから親御さんになる方や育児で悩まれている方に向けて、自身の経験を通して何かお言葉をいただけないでしょうか。

丹後さん:社会全体で子ども達を育てていけたらいいなと思います。私も長女を出産した時は全部自分がやらなくてはいけないと勝手に思っていました。仕事も育児もキチンとしないといけないと思い、身体の悲鳴を無視し働き続けた結果、子どもも私も体調を崩してしまいました。その度にたくさんの人に助けてもらい、今日に至ります。

自分一人で出来る事には限界があります。だからこそ以前のように社会全体で子ども達を育てていけたらいいなと願っています。ひと昔前の日本では、きっとそれが当たり前だったはずです。私が住んでいる地域はまだ少しそのような文化が残っていますが、もっとみんなで育てていけたらいいですよね。


 

子どもがいる人でもいない人でも、子どもという存在を通して学べる事っていっぱいありますからね。赤ちゃんからご老人まで社会にはいろいろな人がいますから、自分は社会のその一部だと思い、楽しんで生きてもらいたいです。

それと、もし今何かに悩んでいるのなら、それは本当に自分がやりたいのかどうかをじっくり考えてみるのもいいと思います。例えばママ友作りにしても「みんなママ友がいるみたいだし私も作らなきゃ」と思うのと「育児に関して気軽に話せる友達ができたらいいな」と思っているのでは大きな差がありますよね。自分の「したい」に対しての悩みなのか、そうでないのかで考えてみると答えが出やすいかもしれませんよ。





森山:丹後さんがこれまでの子育てで意識されてきた事はありますか。

丹後さん:憧れだった小学校教師になった時、嬉しさと共にとても大きな不安を感じました。自分が思い描いていた先生像と現実とのギャップを目の当たりにし、子ども達に対してどのように接したらいいのか分からなくなった時がありました。


それから数年後、自分が親になると分かった時、今度は子ども達にどう接したらいいんだろうかと、同じように悩んでしまったんです。自問自答しながら育児を続ける中で何となく、娘達に注意する理由は3つにしようと決め接するようになりました。

1つ目は自分の命や他の誰かの命に危険がある時

2つ目は他人を傷つけた時

3つ目は一人暮らしをする上で、知っておいて欲しい事・大事にして欲しい事を伝えたい時

私達家族はいま愛媛県に住んでいます。田舎に住んでいるというのはだいたい18歳の進学時に実家を出て一人暮らしをするというのが一般的です。その時に娘達が困らないように、先ほどあげた3つの事が起きた時のみ注意するように意識して生活してきました。

そして3つの理由以外で私が娘達に注意した時は逆に教えて欲しいと伝えています。小さい時からこの話をしてきたので、娘達も違和感を感じた時は教えてくれ、お互いに話をして解決するようにしています。この経験を繰り返す事で、親や目上の人から何か言われたとしてもそれが全て正しいとは限らないという事を認識できるようになると思うからです。18歳は成人の年齢ですが、周囲に流されやすい年齢でもあると思います。だからこそしっかり自分で見極めて判断できる人になって欲しいなと思い、実験をしている最中です。





森山:小さい時から自分で考える力をつけるのは大事ですね。これからについてお聞かせください。

丹後さん:娘達にはそのままの感性で大人になって欲しいなと思っています。

それと言うのも、私の両親はしつけに厳しく親のいう事は絶対的なところがありました。そのためか私はルールは守りたい、説明書もしっかり読みたい、何事にも手は抜きたくないというタイプの性格になりました。

しかし私から生まれてきてくれた娘達はとてものびのび、子どもらしい感性でいまのところ育ってきてくれています。怒られるかもしれないから、失敗するかもしれないからとチャレンジするのを辞めるのではなく、子ども達にはどんどん挑戦していって欲しいです。失敗から学ぶ事も多くありますし、チャレンジできる勇気を与え続けてあげたいなと思います。子ども達から学ぶ事も多く、私をお母さんにしてくれたてとても感謝しているんです。

そのためにいつも「お母さんはいつでもあなた達に寄り添うよ」と言っています。時に何かを傷つけても一緒に謝りにも行くし、問題を解決できるように、その壁を乗り越えられるように寄り添いながら、チャレンジし続けられるように、見守りを続けたいと思っています。



森山:丹後さん自身のこれからはどのようにお考えですか。

丹後さん:これからの人生で起きるまだ見ぬ世界へのワクワクを楽しみに生きていきたいなと思っています。

田舎で育ち18歳の大学進学と共に実家を離れ一人暮らしを始めました。地元にいた時は目に見える範囲が全てと思っていたし、世界がとても狭かったです。しかし一人暮らしを始め大学にいってみると、さまざまな世界や人、価値観に出会い世界が一気に広がりました。さらに小学校教諭になり子どもの力にもハッとさせてもらいました。未来を信じて進む事ですごい力が生まれるんだって気が付かせてくれたんです。

タオルの世界に飛び込んだ時も「なんでこの道を選んだの?」と聞かれます。「取引先もなく知識もない、未来への可能性も感じられない世界によく飛び込んだね」と言われるんです。でもダメって一度決めてしまうとそこから思考しなくなりますよね。

選択肢って実はいっぱいあって、できる選択肢を探してみればいいのに「ダメ」と言って思考を停止し切ってしまうとそこで終わりで、自分も成長できなくなってしまうと思うんです。挑戦してみて、そこから学びがあり失敗から得られる事も多く自分の成長になると私は感じています。

まだまだ知らない世界はたくさんあるし、成長できる機会はひろがっているんですよね。それを思うと、自分のまだ見ぬ世界に対して期待し楽しみにしていきたいと思います。




第3部終了 




■第1部「誰にも相談できなかった不妊治療」はコチラから

インタビュー丹後さん


■第2部「自分の声を聴く」はコチラから



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【ご紹介】

丹後さんが運営されている「しあわせを織りなす」という意味のタオルブランド“OLSIA” 

SNS: https://www.instagram.com/invites/contact/?i=deaw66w3agek&utm_content=36khxal



インタビュー/ライティング:森山 千絵