産前産後のお母さんやそのご家族へ、出産に関する体験談をお伺いするインタビュー企画。これからお母さんになる方やそのご家族には、不安・悩みも多いと思います。子育ては十人十色ですが、誰かの経験を知ることで選択肢が少しでも増え、悩みの緩和に繋がると思い、先輩たちの実体験をお届けします。

第7回目としてお話を伺ったのは長嶺 菜菜子(ながみね ななこ)さんです。

大手製薬会社にて営業職として活躍されている長嶺さん(現在は育児休業中)。6年前よりインスタグラムで発信を続けられ、現在ではフォロワー8万人以上の人気インスタグラマーです。

第1部では妊娠を機に故郷の沖縄へ旦那様と一緒に移住され、予想もしていなかった帝王切開の体験談をお届けしました。第2部では帝王切開の術後にあった知らなかった苦行と、すれ違っていく旦那様との関係についてお話を伺いました。


<プロフィール>
長嶺 菜菜子<Nanako Nagamine>
沖縄県出身、在住。日本女子大学理学部卒業、東京理科大学大学院卒業。大手製薬メーカーに就職し、全国転勤の営業職に従事(現在は育児休業中)。九州、関西、関東と転勤生活を続ける中、旦那様と出会い、妊娠を機に沖縄へ帰郷。2016 年よりインスタグラムでの発信を本格化し、現在ではフォロワー数8万人以上の人気インスタグラマーに。沖縄での生活やママエピソードを発信中。同時にSNS運用支援なども手掛けている。
30代に長男、翌年に長女を出産。




第2部:産後

帝王切開についてきた予想外の苦行

本音を確認できた話し合い




森山: 緊急帝王切開でご出産されましたが、入院中はいかがでしたか。

長嶺さん(以下敬称略):私は自然分娩で出産するとばかり思い、イメージトレーニングや運動をしてきたのですが、結果的に緊急帝王切開になり、心の準備が整わないまま分娩が進んでいき、無事に息子が誕生しました。

誕生の喜びもつかの間、手術台で処置を終えベットに移り、病室に移動しました。しばらく横になっていると、助産師さんが確認のために来てくれて、傷口を見てもらいました。そして「子宮を元の位置に戻すため」と言い、お腹をグググーと押されたんです。それはそれは、言葉では表現できないほどの激痛でした。

帝王切開の話は友人からも聞いていましたが、まさかこんな痛みがあるとは知りませんでした。処置してもらった後は、驚きと痛みのせいか、しばらく放心状態でした。後から知った情報ですが、帝王切開でも子宮の戻し方は病院によってそれぞれみたいです。本当にその処置が痛くて、あと何回あるのかと恐怖すら感じていました。

帝王切開を経験された方はみんなこの術後の痛みを経験したんだと思うと、本当にすごいなと尊敬したと同時に、前もって教えてもらいたかったですね(笑)。

分娩翌日の傷がまだ治まっていないうちから歩くように言われ、同時に母子同室も始まり、母乳を出す訓練も少しづつ行いました。

初めての母乳はあげ方、姿勢、何についても分からないことだらけで戸惑いました。母乳を1回お休みするとすぐにおっぱいが張ってしまい、石のように固くなってしまってビックリしました。漢方薬を処方され、その時は乳腺炎にならずにすみましたが、母乳育児の難しさを感じました。息子のお世話や自分のリハビリ、ホルモンの関係もあって入院中でもあまり寝れず、忙しかったです。



森山:自然分娩でも帝王切開でも出産は命がけですね。退院後はご実家に戻られたのでしょうか。

長嶺:実家に戻りました。生前、祖母が住んでいた家を改装し、夫と息子と3人で暮らす予定だったので、半年くらいは実家でお世話になりました。

特に産後1カ月の時は、夫も何日も泊まり込みでお世話をしてくれて助かりました。夜中の授乳にも起きて、おむつ替えやミルクの用意をサポートしてくれました。2~3時間毎に起こされるので2人とも寝不足になり、当時の記憶がないくらい、必死でした。

私の場合、近くに親がいてくれて、夫も積極的に育児に取り組んでくれたので、本当に助かりました。両親には食事や子守りに関してもサポートしてもらいましたが、精神面での支えが大きかったです。産後は感情の起伏が激しくて、悲しくなったり落ち込んだりした時もあって。親が近くにいてくれた私でさえ不安定な精神状態になったので、多くの人が産後鬱になるのも分からなくないなと思いましたね。





森山:ご両親や旦那様のサポートは大きな支えになりましたね。半年後に新居に移られてからはいかがでしたか。

長嶺:改装も終わり、いよいよ家族3人での生活が始まりました。生後6か月の息子と夫、それに私は2人目を妊娠したタイミングでもありました。

正直、とてもつらい時期でした。つわりで自分の体調もさほど良いとは言えない状態の中、まだ生後6か月の息子のお世話や家事もしなくてはいけない。夫は日中、仕事で外に出てしまうので話相手もサポートしてくれる人もいなくて。私はもともと外に出て活動するのが好きなタイプだったので、外に出れないというストレスは大きかったです。

夫は仕事をするために外に出ていると分かっていても、「外に出れる」という点だけに焦点がいってしまって。慣れない育児、自分の時間が取れないストレス、体調不良で動けない自分への自己嫌悪など、負の要因が重なり、夫に対して嫉妬やイライラを感じていました。

夫が仕事から帰ってきても「どうして私だけが家に居なくていけないのか」という疑問だけが頭の中を支配し、夫にあたってしまう日もありました。言葉にはしなくても私からイライラした空気が出ていて、夫との関係は最悪で「離婚」という文字がチラつきました。


精神的にも良くない状況の中、徐々につわりが重くなり、横になっていないと耐えられない状態になってきたので、私と息子は実家に戻りました。

実家に戻ると、両親が息子を見ていてくれたので、1人で考える時間が出来ました。今まで自分がしてきた夫への態度や言葉、夫からの言動など振り返る余裕ができたのです。「このままではいけないな、ちゃんと話し合いをしなくては」と思い、夫と2人だけで話す時間を作りました。

話し合いをして初めて夫の想いを知りました。仕事が終わり疲れて帰宅しても、癒されるわけでもなく、私はイライラしていて空気は最悪。家の空気感が耐えられなくて、仕事が無くても口実を作り、外出していたというのです。ショックでしたね、夫にそんな想いをさせてしまったのかと本当に申し訳なく思いました。



森山:心身共に苦しい時期を過ごされたのですね。旦那様との話し合い以降、何か変化はありましたか。

長嶺:変わりましたね、夫への感情も接し方も変わりました。振り返ってみると、新居で暮らしていた時期はお互いが本音で話せてなかったなと気が付きました。ホルモンの関係もあったのかもしれませんし、まだ息子が小さくてとても手がかかったという状況もあったのかもしれませんが、精神的に追い込まれ、自分の事でいっぱいいっぱいになり、相手の事まで考えられていなかったです。

あのまま新居で暮らしていたら、もしかして別れを選んでいたかもしれないです。あのタイミングで実家に帰り、身体と心に余裕が出来、夫婦間を見つめ直す時間が取れたのは本当にありがたかったです。

産後すぐのサポートもそうですが、子育ては1人で何でもしようと思うと難しいですね。私は実家が近くにあり、両親に頼ることができましたが、難しい方もいると思います。できるだけひとりで抱え込まず、両親や友達、行政のサポートなど頼れるだけ頼っていいと思います。




第2部終了 

■第1部「予想外にはじまった緊急帝王切開」はコチラ



■第3部「子育てはひとりで頑張り過ぎない」はコチラ


 
 

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【ご紹介】

フォロワー数8万人以上の人気インスタグラマーである長嶺さんが

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インタビュー/ライティング:森山 千絵