産前産後のお母さんやそのご家族へ、出産に関する体験談をお伺いするインタビュー企画。
これからお母さんになる方やそのご家族には、不安・悩みも多いと思います。子育ては十人十色ですが、誰かの経験を知ることで選択肢が少しでも増え、悩みの緩和に繋がると思い、先輩たちの実体験をお届けします。

第14回目としてお話を伺ったのは遠藤 温子(えんどう あつこ)さんです。

遠藤さんは法律の専門家である弁護士です。中小企業の民事、労働事件、不動産の法律問題、ネットの誹謗中傷対策、保険会社関係の業務を多く行なわれています。

弁護士だったお父様の影響もあり、法科大学院卒業後、資格試験に挑まれ合格。これからという時にお父様が急死され、突然稼業を継がれます。また同業者である旦那様と出会われ結婚。現在は3人のお子さまのお母さまです。

3人のお子さまを2歳差で出産された遠藤さんは、2人目、3人目を妊娠中に切迫早産と診断されます。退院の見えない突然の入院やコロナ禍での出産など、個人事業主として育児に奮闘中の今をうかがいました。


<プロフィール>
遠藤 温子<Atsuko  Endo>
東京都出身、在住。2004年学習院大学法学部卒業 2010年一橋大学法科大学院卒業。父親の影響もあり、弁護士の道を目指す。司法試験を合格し”伊藤遠藤高野野崎法律事務所(現あみた綜合法律事無所)へ入所。父の急死に伴い、事務所を引き継ぐ。
また高校時代にはアルゼンチンへ留学経験がある。
プライベートでは30代で長女、長男、40代で次女を出産。




第1部:産前

予想外の入院生活

無痛から自然分娩へ




森山:妊娠までの経緯を教えていただけますか。

遠藤さん:司法修習同期だった夫と出会い、結婚しました。子どもは欲しいと思っていたのですが、なかなか恵まれず結婚して4年後に妊娠しました。

妊娠検査薬で妊娠が分かった時、結婚してから夫婦二人の時期がそれなりにあったので、喜びと同時に驚きもありました。妊娠中は軽めのつわりと体の痒みが一時的にありましたが、大きな体調変化もなく予定日近くまで仕事を続けられました。

しかし2人目以降は様子が変わりました。私には現在3人の子どもがいます。2歳差で子どもを妊娠したのですが、2人目、3人目の時は切迫早産になり入院生活を送る事になりました。


2人目を妊娠していた2020年にコロナウイルス感染症にかかり、入院しました。症状自体は軽症でしたが、当時はコロナが流行り始めた時期でしたので、妊婦という理由で大事をとり、入院という対応になりました。
2週間程度で退院ができ、ホッとできたのも束の間、定期検診の際に、「子宮頸管長が短くなっていて切迫早産(※)」という診断になり、頸管を糸で結ぶ手術を行いました。手術も術後経過も順調だったため、10日程入院したのち、日常生活にもどれました。

3人目も2人目と同じように切迫早産と診断され、頸管手術を行いました。ただ2人目の時とは異なり、コロナウイルス感染症流行の影響か、3人目は病院を変更したので病院の方針の違いか、経過観察期間はなくすぐに退院となりました。医師からは「家に戻ってもベットの中で安静にすごすように」と言われましたが、仕事もあり、2人の子どもがいるので1日中ベットの中で過ごす訳にもいかず、家で仕事をしたり、保育園の送迎や簡単な家事などはしていました。



森山:予想外の入院生活は大変でしたね。手術をされて体に変化などはありましたか。

遠藤さん:特に変化はありませんでした。妊婦健診の度に2種類のエコーで観察を続け、少しでも子宮口が開いていたり、頸管がさらに短くなっていたら即入院と言われていたので気にしながら生活はしていました。自宅に居れば仕事もできますが、入院すると出来る仕事の範囲も限られますし、姉弟の育児がありますので、出来れば入院せずにいたいなと思っていましたね。


頸管縫縮術には抜糸もあります。糸を外すと胎児がすぐに産まれくる可能性も高いため、臨月と呼ばれる生産期の37週に糸を外す方が一般的と言われており、私もその時期まで待って抜糸をしました。

2人目は抜糸をしてから数週間後に破水して生まれましたが、3人目は子宮頸管長がだいぶ短くなっていたのもあり、抜糸をする日に計画出産となりました。2人とも37週までお腹の中で育ってくれたので、産まれた時はある程度大きくなっていてよかったなと感じました。





森山:いつ産まれてきてもおかしくない状況下での生活は不安な日々だったとお察しします。話は戻りますが、1人目の出産はどのように進んでいったのでしょうか。

遠藤さん:出産するなら無痛分娩にしようと思い、専門的に取り組んでいる大きな病院を選んでいたんです。しかし予定日が近づいたある日、陣痛が来て病院を受診しました。

そのまま入院して様子を見る事になったのですが、担当してくださった看護師さんに「分娩までには時間がかかるし体力も必要だから食べられるうちに食事をとってね」と勧められ、空腹でもなく「麻酔をかけるのに食べる必要があるのかな」と疑問に思いながらも、一口だけ食べました。

それと言うのも通常、無痛分娩の麻酔を使用するには開始2時間前から絶食になります。しかし予想外にも陣痛が早く来てしまい2時間を待たずに分娩室に移動する事態となり、麻酔が使用できなくなってしまったんです。

無痛分娩を希望し、病院まで選んだのにまさか一口食べた食事の影響で出来なくなるなんて予想もしていなかったので信じられなかったです。しかし始まってしまったお産を止める事はできません。そのまま自然分娩での出産になりました。



森山:病院選びのポイントにもなった無痛分娩だったのに、何が起きるかわかりませんね。
旦那様も立ち合われたのでしょうか。

遠藤さん:本当ですね、切迫早産の入院も分娩も予想していなかった事だらけです。

夫は1人目のときは、立ち合う予定だったのですが、タイミングが合わず、間に合いませんでした。と言うのも1人目が4時間という早さで産まれてくれたのであっと言う間だったんです。個人差はあると聞いていましたが、思った以上に早く産まれたので自分でもちょっと驚きました。

分娩が無事に終わった安堵感と、長女のしっかりした声を聞き、「本当に産まれたんだ」という気持ちで嬉しかったです。




第1部終了 


※子宮頸管長とは:子宮の入り口の長さ

子宮頸管長が短いと早産につながる可能性が高く、胎児が予想よりも早く出てくる確率が上がります。37週までの生産期までお腹の中で胎児を留めさせておくために、子宮頸管を糸で縛る頸管縫縮術をおこない、早産や流産の確立を下げる対応が取られる事もあります。ただし頸管縫縮術の効果については見解が分かれるとの意見もあり、病院によっても異なるようです。

(国立成育医療研究センターHPより一部抜粋)



■第2部「個人事業主ならではの悩み」はコチラから



■第3部「子育ては予測不能の連続」はコチラから



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【ご紹介】

遠藤さんが経営されている あみた綜合法律事務所 のHPはコチラ

http://www.w-jurist.com/introduction/



インタビュー/ライティング:森山 千絵