産前産後のお母さんやそのご家族へ、出産に関する体験談をお伺いするインタビュー企画。これからお母さんになる方やそのご家族には、不安・悩みも多いと思います。子育ては十人十色ですが、誰かの経験を知ることで選択肢が少しでも増え、悩みの緩和に繋がると思い、先輩たちの実体験をお届けします。

第12回目としてお話を伺ったのは木村 尚子(きむら なおこ)さんです。

木村さんは、国産のお米と野菜でできた「おやさいクレヨン」をはじめ、プロダクトやグラフィックデザインを手掛けるmizuiro株式会社の代表取締役です。

第1部では出産までのお話として、分娩時に感じた神秘的な感覚について、第2部の子育てではひとり親として娘さんと共に歩まれてきた経緯についてお届けしました。第3部のこれからでは人生は自分で切り開いていくことが大事だとお話して頂きました。


<プロフィール>
木村 尚子<naoko kimura>
青森県出身、東京都在住。デザイン系の専門学校を卒業後、青森県内の情報誌会社へ就職。デザイン会社勤務を経て2012年にフリーランスデザイナーとして独立。同年、廃棄となる野菜からクレヨンを製造する「おやさいクレヨン」を考える。約2年の開発期間を経て販売。国内外からも大きな反響となり、2014年法人化し「mizuiro株式会社」を設立。新しいクレヨンの開発と同時に、チャリティーイベントや震災孤児への寄付、保育園への寄贈など、親子に寄り添った活動を続けている。
プライベートでは20代に長女を出産。




第3部:これから

SNSにとらわれ過ぎないように

人生は自分で構築していく




森山:「親子時間をデザインしたい」と子育て時間を大切にされている木村さんですが、自身の子育て経験を通して悩んでいる方々にメッセージをいただけないでしょうか。

木村さん(以下敬称略): SNSやネットの情報にとらわれ過ぎないように、自分でセーブするのも大切かなと思います。

世間はネット社会になり、SNSを通して本当に情報が溢れている状況ですよね。調べればいくらでも情報は出てくるし、スマホ一つで簡単に調べられる便利な世の中になりました。調べたいこと、知りたいことをすぐに見つけられるようになりましたが、ネットの情報に振り回されてしまう人も多くいると思います。

それとSNSには、投稿者にとって良かった瞬間の状況を載せる投稿が多いですよね。受け手の心情や状況によって感じ方は異なりますが、投稿された画像と自分の状況を比較してしまう場合も多いのではないでしょうか。

「投稿した人は充実感にあふれ、毎日がきっと輝いているのだろう」と載ってもいない想像を思い描き、自分の生活と比較し自己嫌悪になってしまう。「自分は自分」と割り切れれば良いですが、なかなか難しいと思います。ですのでネットやSNSに頼り過ぎたり、長時間み過ぎたりしないように、自分でコントールできるようになって欲しいですね。



森山:受け手の状況によってとらえ方は変わりますよね。対策などがあれば教えていただけませんか。

木村:私も模索中です。皆さんと同じように悩む時もあり、同じような地位や立場の方の投稿を見て気分が沈む時もあります。しかし反対に私の投稿を見て「木村さんは成功者として輝いていますよね」とお声をいただくこともあるのです。確かにブランドイメージがあるので注意しながら投稿をしている部分もありますが、人の芝生は青く見えるのかもしれませんね。


結局のところ、もしかしたら皆さん同じなのかもしれません。世間的には輝いて見える人も、普通に仕事ややるべきことを行い、毎日を懸命に生きているのだと思います。





森山:ひとり親家庭として娘さんを育ててこられた木村さんですが、同じような立場で子育てをされている親御さんへ自身の体験を通して、お言葉を頂けませんか。

木村:私は出産した3カ月間以外、ずっと働き続けてきました。時には正社員の仕事以外にもお弁当屋さんやコンビニで掛け持ちをしていた時期もあったくらい、娘と自分の生活のためにがむしゃらに働いてきました。違う職種を経験したからこそ出会えた人や知識もあり勉強になりましたが、なぜこんなにも苦労しなくてはいけないのか、何のために働いているのかと絶望する日もありました。けれども、結局働き続けてきたからこそ、今のスキルがあると思っています。

もちろんおひとりでお子さんを育てられている方は、もうすでに仕事をされている方ばかりだと思いますが、いまご結婚されて旦那さんに収入を頼っている方でも、いつ何が起きるか分からないですからね。自分で自立して生きて行けるように、スキルは日々磨いていくべきだと思います。仕事をされている方はそのスキルをより極めていったり、また別の知識を磨いてもいいと思います。

今はオンラインで家に居ながら勉強が出来たり、副業が出来る時代になりましたから、スキルアップが以前より実行がしやすい環境です。年月はかかるかもしれませんが、人に頼るのではなく、自分で人生を進めていけるスキルを磨いていって欲しいですね。



森山:自立していけるように日々の鍛錬が重要ということですね。

今後についてのご意見をお聞かせください。

木村:もうすぐ設立10年目になります。会社を立上げた当初は、10年続けられるか分からない状態でしたが、もう目の前に来ています。「もう少し頑張ろう」「あと3年頑張ってみよう」と少しずつ目標を決め、達成し続ければ、長く遠い年月のように感じる15年、20年も案外目の前になってくるような気もしています。

昨年からは会社の基盤を青森から東京へ移し、新しい挑戦ができるのを楽しみにしています。今まではメーカ―としての存在であったmizuiro株式会社ですが、これからは素材を提供できるようなお仕事もしていきたいなと思っています。

そのためにもまずは目の前の10年目を無事に迎え、新しい挑戦にも果敢に挑んでいきたいですね。


また、娘も現在大学1年生です。私は子どもが社会人になるまでは親の務めと思っているのでもう少し娘の成長を見守っていこうと思っています。まずは自分で生活ができるように在学中に1人暮らしにも挑戦してみて欲しいですね。やはり一緒に暮らしていると家事は私がやってしまうことが多いので、1人で生活してみる期間も必要だと思っています。

私は卒業後、地方の会社に就職し、その後独立して起業という道を歩んできました。しかし娘には、卒業後に組織の中で働く経験を一度はして欲しいなとも思っています。与えられた仕事に対して期待以上に頑張れるように、じっくり取り組める社会人になって欲しいです。誰かに頼って生きていくのではなく、能力やスキルを磨き続け自立していく大人へ成長してくれたら嬉しいですね。




第3部終了 




■第1部「地球と自分がつながった瞬間」はコチラから



■第2部「母の背中を見てきた娘の変化」はコチラから



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【ご紹介】

木村さんが代表を務めるmizuiro株式会社。

「親子の時間をデザインする」デザインの会社はコチラから

https://mizuiroinc.com/



インタビュー/ライティング:森山 千絵