産前産後のお母さんやそのご家族へ、出産に関する体験談をお伺いするインタビュー企画。これからお母さんになる方やそのご家族には、不安・悩みも多いと思います。子育ては十人十色ですが、誰かの経験を知ることで選択肢が少しでも増え、悩みの緩和に繋がると思い、先輩たちの実体験をお届けします。

第5回目としてお話を伺ったのは飯尾 善子(いいお ぜんこ)さん。

自然派を取入れた鍼灸院を開業(現在は休診中)され、幼稚園でも特別講師としてお話されている飯尾さんは、4人のお子さまを育て上げ、現在はお孫さんのお世話もされています。

第1部は助産院までの出会いや家族総出で立ち会った出産までにエピソード、第2部では産後として母乳トラブルに悩んだ時期を経て鍼灸院を開業したお話についてお届けしました。第3部では自身の子育て経験を通して、これから親御さんになる方や現在子育て中の方へ送るメッセージを伺いました。


<プロフィール>
飯尾 善子<Iio Zenko>
東京都出身、在住。東洋鍼灸専門学校を卒業後、ご主人と鍼灸院を開業。1年後に妊娠、出産のため休職し、4人のお子さんの育児に専念。2005年に自宅にて母乳相談も併設した女性専用の鍼灸マッサージ院「いいおテラピールーム」を開業。自然派の考え方を活かした治療法で多くの女性、お母さん、赤ちゃんをケアされてきた。(現在は休診中)
現在は幼稚園での特別講師の他、高齢者施設で機能訓練指導を担当されるなど幅広い年代の方に向け奉仕されている。
プライベートでは20代中ばに長男、その後長女、次男、三男を出産。




第3部:これから

“甘やかし”ではなく“甘えさせ”

子どもは家族の宝物、みんなで育てていきましょう


森山:4人の子育てを経験されお孫さんのお世話もされている飯尾さんですがこれから親御さんになる方や子育てで悩んでいる方に向けて、自身の経験を通してメッセージをお願いします。

飯尾さん(以下敬称略):スマホ育児にならないようにしてもらいたいなと思いますね。スマートフォンはすぐに欲しい情報が分かるし、とても便利な道具で今の生活には欠かせないものになっています。テレビゲームもそうですが、確かに楽しかったり刺激があったり面白いのは分かりますけど、そればっかり長時間見させる、やらせてしまうのは問題があると思います。スマホだったら電磁波の問題もあるし、動画サイトだと危険なサイトに通じてしまったりと自分で判断する力や責任が持てない子ども達に長時間預けるのは危ないと懸念しています。

とはいえ私も子ども達が小さかった頃はテレビやビデオに頼っていた時もありましたが、時間を区切ったり、ゲームだったら制限をかける、子どもと約束やルールを決めて使わせるなど親がキチンと管理して守ってあげることも大切です。

それと大人もネット依存にならないように注意してもらいたいなと思いますね。子どもの話でもよく耳にしますが、お母さん同士でもオンラインの中でいじめにあったりとかあるんですよね。

コロナ禍となりZOOMやオンライン化が進み、みんな繋がっているというけど、やっぱり画面越しには体温や温度は感じられないですし、人の心がやっぱり異常、悲鳴をあげていると感じます。だからネット依存にならないように、スマホに書かれている情報が全て正しいとも限りませんし、しっかり見極めて使って欲しいですね。

自然派育児を推奨しているのもありますが、お子さんと外にでて自然に触れることも積極的に楽しんで欲しいなと思います。四季折々の花や動物を見たり、鳴き声を聞いたり、外を散歩するだけで沢山の発見がありますからね。そこに親御さんの声がけがあれば子ども達はもっと自然に対して興味を持って接します。自然をもっと大事にして欲しいですね。



森山:スマホ依存、大人でも問題になっていますし全世代に通じる課題ですね。

飯尾:そうですね。あと子どもは夫婦2人の宝物なので、お母さんだけ、お父さんだけとどちらかに偏るのではなく家族でしっかり育てて欲しいなと思っています。いまのご家庭は私たち世代とはまた違って、共働きのご家庭が多いと思います。だけど仕事が忙しいから家族や夫婦で話し合う時間がありませんというのはちょっと違うかなと。

平日は特に仕事で忙しくて顔を合わせて話し合いを持つ時間が取れませんと言うのであれば、それこそ便利はアプリのツールなどを使えばいいと思うんです。

例えば電車に乗っている時間にメッセージを送るとか、確認することはできますよね。「今日●●ちゃんは遠足にいってるよ」だけでも家族間で共有しておけば、帰宅後に子どもに対する声がけも変わると思うんです。「遠足どうだった?」と子どもに質問すれば「言ってなかったのに、なんで知ってくれているの!」とお子さんもきっと喜びます。

そういった日々の小さなコミュニケーションも面倒がらずにして欲しいですし、パートナーに対する感謝の気持ちも忘れずに持っていて欲しいですね。お仕事をしてくれていること、家事をしてくれていること、お互いが忙しい中でも感謝の気持ちを持って接していけば、子どもは親の言葉や態度を見聞きしているしまっすぐな子に育つはずです。



森山:忙しいと日常をこなすタスクで忘れがちな感謝ですが、大事ですね。

飯尾:それと甘やかしと甘えさせてあげることの違いを認識して甘えさせて欲しいです。甘やかしは何か物を買ってあげたり一方的にすること、甘えさせてあげるのは膝の上で抱っこしたり一緒に本を読んだり共に時間を共有する体験に近いこと。

似ている言葉ですが、その意味は全然ちがいますよね。甘やかしは簡単ですし、あまり記憶には残らないと思います。もちろん特別な日とか時々ならいいと思いますが、やっぱり甘えさせてあげる、ぎゅっと抱きしめあいっこをしたり、触れあいを大切にして欲しいですね。



森山:大切なことですね。飯尾さんご自身の今後についてお聞かせください。

飯尾: 現在、大田区にある嶺町幼稚園で特別講師としてお迎えいただき、「触れ合うことの大切さ」について保護者の方向けにお話をさせて頂いています。

ひとクラスに1度ずつ、大体年1回お話させて頂いていますが、私の子育て話を交えて親子でのふれあいが子どもの成長に大きく関わってくることや、なるべく食事や日用品でもナチュラルなものを選んだほうがいいよということをお話させて頂きます。限られた時間になりますので、そこから気になったキーワードなどを保護者ご自身で調べてもらうヒントの時間になればいいなと思っています。

毎回だいたい同じ内容をお話させてもらうのですが、ご参加いただいた保護者の方の中には「上の子にはできなかったです」と涙される方もいたり「1年の振り返りができてよかったです」と言って下さる方も居て、私にとっても皆さまの元気をいただけるステキな場になっています。

鍼灸マッサージ院「いいおテラピールーム」は現在お休みをさせて頂いておりますが、また子育て中の親御さんへ何かお役に立てることをしたいなと思い、準備中です。

そして何よりも子どもは私達夫婦にとってかけがえのない宝物です。子ども達自身が親になったいまでも子どもから学ぶことも多いです。私が子育てに専念していた時期はついつい子ども達に対して過干渉になっていた時もありましたが、いまは子どもが助けを必要としている時にいつでも助けてあげられる存在でいたいと思っています。 ただ手をかすのではなく、子どもが親として責任がとれるように。娘、息子たちがこうやって子育てをしたいという意見を尊重し、そこから外れないように手を貸してあげたいなと思っています。




第3部終了

■第1部「家族で見守った生命誕生の瞬間」はコチラ


■第2部「水分も制限していた母乳育児」はコチラ



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【ご紹介】

■飯尾さんが院長を務める自然派鍼灸マッサージ院「いいおテラピールーム」(東京都大田区 / 現在は休診中)

https://www.facebook.com/iiotherapyroom/


■焼菓子屋 tsumugi菓子

https://home.tsuku2.jp/storeDetail.php?scd=0000135713

飯尾さんの娘さんである美香さんが、相模湖で月に1回オープンする焼菓子店。幼少期には卵アレルギーがあり、人一倍ケーキへの憧れもあったとか。厳選したこだわりの素材を使用し、我が子のように愛情をもってお菓子を作り上げている。



インタビュー/ライティング:森山 千絵