産前産後のお母さんやそのご家族へ、出産に関する体験談をお伺いするインタビュー企画。これからお母さんになる方やそのご家族には、不安・悩みも多いと思います。子育ては十人十色ですが、誰かの経験を知ることで選択肢が少しでも増え、悩みの緩和に繋がると思い、先輩たちの実体験をお届けします。
第8回目としてお話をお伺いしたのは長谷川 Sさんです。(ご本人のご要望によりイニシャル表示とさせていただきます。)
新卒で外資系企業に就職し、40代までバリバリのキャリアウーマンとして過ごされてきたSさんは、40代で第1子と第2子を出産します。産休中にも食事法や教育について学ぶなど積極的に活動されているSさんです。
第1部では出産、第2部では食事法やキャリアについてお届けしてきました。第3部ではこれからとしてSさんが子育てをする上で大切だと思うことについて伺いました。自分の時間を持つ、さまざまな情報を集めて自分軸をつくること、ヒントとなる言葉を頂きました。
<プロフィール>
長谷川 S<S Hasegawa>
東京都出身、在住。2000年早稲田大学商学部卒業。同年に外資系IT会社へ就職。2006年に結婚、2007年に不動産業界へ転身。住宅のプロモーションやマーケティングを経て現在はイベント企画・運営等を担当。育児休業中に食育や教育についての知識を深める。
プライベートでは40代に長男、次男を出産。
第3部:これから
頼ることを恐れず自分の時間をつくろう
子育ても夫婦間でよく話し合うことが大切
森山:子育てに仕事にとお忙しい毎日を過ごされているSさんですが、実体験を通して伝えたいメッセージをお願いします。
Sさん: 子育てで忙しい中でも好きなことをする時間を持つのが大切なのかなと思います。
私の父はサラリーマンから独立して会社を立て、母は専業主婦でしたが40代から自分の好きなことを始めて仕事にしていました。そんな両親が好きなことをしている姿を見てきたからか、私も子どもには自分が好きなことをして生き生きとしている背中を見せていきたいなと感じています。
仕事にしても趣味にしても、親だって自分の好きなことをしている時間は必要です。子どものため家族のためにと、自分の時間を犠牲にしていると、少しずつストレスが溜まってどこかしらに悪い影響がでてしまうと思うんです。
私自身、仕事に集中したい時期は保育園の延長サービスを利用して、夕飯まで食べさせてもらっていますし、参加したいイベントやセミナーがある時は、実家の両親や夫に頼んで夜出かけることもあります。
そのことに「ごめんね。」という罪悪感をもつ必要はないと思うのです。最近はイクメンブームで育児に関わる旦那さんも増えてきましたが、まだまだ女性が中心なのは変わりません。自分から声をあげて手伝いをお願いしない限り、すべて母親がやるのが当たり前となっています。いくら自分の子どもだからとはいえ、全部を受け入れることを前提にしなくてもいいと思うのです。 行政含め、昔に比べて様々なサービスが利用できるようになりました。それを自分のために使う時間として利用することを負い目に感じる必要はないのではないでしょうか。
私は2人目の育休中にモンテッソーリ教育(※2)を中心とした幼児教育について、少し勉強しました。モンテッソーリ教育の中で「もともと子どもというのは自分を育てる力が備わっていて、生れた時から自立の道を歩き始めている。子どもというのはやり方が分からない小さな人なのだから、手をかけて教えるのではなく、やり方の手本をみせてあげれば、どんどん自分で取り入れて成長していく」と言っているんです。
2歳を過ぎたころからは、親は何でも手を出して助けてあげるのではなく、意識的にやり方を教えて自立を促すように心がけてもいいのかもしれません。子どもは大人が信じられないスピードでどんどん成長していきますので。
実際によくある話だと思いますが、一人目の育児はいろいろ手を焼いていたけれど、二人目以降は気づいたら成長していたと(笑) 私自身も同様な経験しています。親の手離れと子どもの自立は相関しているではないでしょうか。
森山:子育ての方針などはどのように決めているのでしょうか?
Sさん:そうですね。いろいろな育児本や情報などを参考に、我が家なりの方針は決めています。ただ教科書通りにはいかないので、都度夫や子ども達の意見も聞きながら再考することもあります。100%完璧を求めないで、ある程度臨機応変にやっています。絶対こうあるべきだというのを作ると本来目指したい方向とズレることもあるので。
だからといってあんまり柔軟すぎると迷ってしまうので、ある程度は軸を定めておく。そうすると、何かを決める時の決断が早くなりますよね。休日の行先やテレビ番組の選び方、お菓子やおもちゃの選ぶ基準など、自分たちの軸や進みたい方向が決まっていれば自然と答えがでると思います。
夫ともなるべく具体的な例をあげながら、どうしてそうするのかを話し合っています。そうすると子ども達に聞かれたときも、夫婦で矛盾なく答えられますので。
私は40歳を目前に妊娠しました。世間的には少し遅めかと思いますが、いま思うとそのタイミングでよかったのかなと思っています。もし結婚してすぐに出産していたら、30代前半で親になっていました。きっと周囲で仕事をバリバリ頑張っていたり、自由に自分の時間を謳歌している人達と比べてしまい、焦ったり自己嫌悪になっていたと思います。
それと社会人としてある程度経験を積んでこれたのと、色んな人の人生を見てきたので、自分で自分の人生を生きていくには何が大切で、親として子どもに何をしてあげたらよいかという自分軸ができた気がしています。
面白いですよね、「子育て」という扉は実はすぐ隣に合ったのに、自分が経験するまで全くもって知らない世界だったんですから。子どもを授からなければ開けることはなかった扉。こんな別世界があったなんて、すごい扉をあけてしまったなという感覚です。きっと高齢出産を経験された方が持つ独特の感覚かもしれませんが、開けてしまった扉ですから、自分らしく子育てしていきたいなと思っています。
第3部終了
■第1部「友人の妊娠、人生を再構築」はコチラ
■第2部「家族みんなに好影響を与えた食事変化」はコチラ
※2 モンテッソーリ教育:
20世紀初頭に医師であるマリア・モンテッソーリ博士が考案。「子どもには、自分を育てる力が備わっている」という「自己教育力」を前提に、子どもに対して学びの場を提供していく教育法。
(日本モンテッソーリ教育総合研究所より)
インタビュー/ライティング:森山 千絵