産前産後のお母さんやそのご家族へ、出産に関する体験談をお伺いするインタビュー企画。これからお母さんになる方やそのご家族には、不安・悩みも多いと思います。子育ては十人十色ですが、誰かの経験を知ることで選択肢が少しでも増え、悩みの緩和に繋がると思い、先輩たちの実体験をお届けします。


21回目としてお話を伺ったのは中本 裕己(なかもと ひろみ)さんです。


記者・編集者として長年に渡りご活躍されてきた中本さん、還暦を迎えた現在も編集者として記事やコラムを執筆され、情報を届けていらっしゃいます。またプライベートでは56歳で初めて父親に。高齢出産となった分娩では奥様が生死をさまよう事態に。パートナー・父親、また記者として体験談と当時の想いについて著書を元にお話しを伺いました。


第1部では生死をさまよった分娩について、第2部では回復へとつながった奇跡の面会についてそれぞれお届けしました。第3部はこれからと題して届けたい想いや今後についてです。AIと共に生きていく子ども達に必要なことや、子どもが居ることの素晴らしさなど想いを伺いました。

※本記事は著書「56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました-生死をさまよった出産とシニア子育て奮闘記-」(ワニブックス)を元にお話しをお伺い、編集しております。


<プロフィール>
中本裕己さん(Hiromi Nakamoto)
東京生まれ、東京在住。関西大学社会学部卒業後、産経新聞社に入社。「夕刊フジ」で関西総局、芸能デスク、編集局次長、編集長など歴任。還暦を過ぎた現在も編集者として活躍中。自身の体験談をまとめた著書「56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました-生死をさまよった出産とシニア子育て奮闘記-」(ワニブックス)を出版。 プライベートでは一児の父。




第3部:産後

変化を楽しむ

自分で考え行動する




森山:これから親御さんになる方や育児で悩まれている方に向けて、自身の経験を通して何かお言葉をいただけないでしょうか。

中本さん(以下敬称略):僕も妻も高齢になり子どもを授かりました。本やコラムを読んでくださったからからは「私も50代で親になりました」と同じ境遇の方からもお言葉をもらいます。だからこそ伝えたいのは「一緒に変化を楽しみましょう」です。

妊娠を公表した時にも、まず言われたのが「おめでとうございます!それと、大丈夫ですか」です。確かにそうですよね、56歳で親になり、息子が20歳の時に僕は76歳。資金面でも体力面でも心配されて当然です。


 

しかし子どもが居ても居なくても老後は必ずやってきます。この先の家計の支え方、人生の過ごし方を考えますが、あまり悲観的にならないで欲しいです。もちろん楽観的すぎるのもよくないですけど「子どもが居たからよかった」「子どもと一緒に過ごせてこんな楽しみがある」という視点で一緒に頑張れたらいいですよね。


 
 

子どもが出来てからの数年でこれまでの生活も視点も変わりました。夫婦2人で過ごしてきた9年間は、海外旅行やお酒など楽しく過ごしてきました。しかし今では海外旅行や大人のこじゃれた店も出かけなくなりました。

子どもがいるからこそ感じられる視点や再発見できる機会があるのですよね。近所の公園で自然の良さを感じたり、近場のファミリー向け施設で遊ぶのも十分楽しめます。「こんなに子どもがいる人生が楽しいなんて知らなかった。もっと早く教えて欲しかったよね」と妻ともよく話をするほどです。


 

また子どもが生まれた後に妻から「一緒に変化を楽しみましょう」と言われました。子どもが出来てから、急に予定が変わることも、環境が変わるのも確実に増えました。10年先、20年先のことなんて誰にも分かりません。必要以上に心配にならず、一緒に変化も楽しみながら生きていきたいですね。





森山:思い通りにいかないのが子育てかもしれませんね。人生の先輩として子育てで気を付けていることはありますか。

中本:先日、ご縁を頂き大学で講演をさせて頂きました。その際に先生とも話をしてきたのですが、いまの学生はまさにデジタルネイティブ世代で生まれた時からネットやSNSがあります。

そして息子世代に関していえば、おそらくAIネイティブです。AIの進化と共に息子たちも大きくなる、共に成長していく世代になると予想されます。AIは今までにある膨大な情報をアレンジし、そこから応用させるのが得意ですよね。将来的にほとんどの仕事をAIがこなすようになるでしょう。

逆にAIはわざと失敗をしてそこから何かを学ぶ事や、全く何もないゼロの状態から何かを作り出すのは難しいと思います。だから息子には曲や絵がかけるようになったり、自分から発信できる人になって欲しいですし、子育てでもそういう部分をのばしていってあげたいなと思っています。



また先日、保育園の園長先生からこんな話を聞きました。

息子が通っている保育園には園庭があり、冬の寒い日でも裸足で外に飛び出していく園児や、水遊びを始める子も居るそうです。そんな時、保育士さんたちは声をかけず見守ると言います。すると、子どもが自分で寒さを感じ靴下や靴を履きに戻ってくるそうです。

そこで園長先生が大事にしているのは「自分で気づき行動できる力・選択できる力を育てる」と言う事。今時の小学生は先生に「遊んでいいですよ」といわれても何をしていいのか分からず、指示を待つ子や自分がやりたいことを選べない子が増えていると言います。

先ほどの保育園での話も親目線で考えると、寒くならないように、怪我をしないようにと先回りしてサポートしてしまいがちですよね。そうすると子どもは自分で考える力も行動力も育たなくなり、本当に自分がやりたいことを選択できない人間になる可能性がありますよね。

自ら考え行動する、失敗してもいいからそれをたくさん経験させてあげる。親として見守っていきたいです。



いつものご飯も一緒にたべるとおいしさUP



森山:中本さんのこれからについて教えてください。

中本:僕はこれまで新聞記者として長年勤めてきました。分野としては芸能やエンターテインメントが中心でしたが、子どもをきっかけに子育てに関する講演、大学での講義など、これまでにない機会も頂けています。

親としての収入面というのもありますが、これからの自分の人生をどのように生きていくのかを考えた時に、培ってきた知識や経験を活かしつつ、新しい挑戦にも積極的に取り組んでいきたいと思っています。

また子どもに対しては自分のやりたい事が出てきた時には全力で応援してあげたいです。文章を書いてきた僕に教えてあげられるものがあるなら伝えてあげたいし、金銭面的にもサポートしていきたいですね。



森山:ありがとうございます。これまでの著書やコラムに関してどのようなお声が届いていますか。

中本:子育て本や月1回掲載している子育てコラムに、ありがたいことにたくさんのコメントやご意見を頂きます。当初は批判的な意見が多くくるのかなと身構えていたのですが、8-9割の方から「子育ての素晴らしさを再認識できました」「子どもってやっぱりいいですよね」など肯定的な感想を頂く事が多いです。


さまざまな方への配慮が求められるのが今の社会です。結婚ではない道を選ぶ人、欲しいけど授からなかった人、子どもが苦手な人など様々な意見を尊重し、記事を書くべきなのは当然です。僕も子どもが出来るまでは子どもが苦手でした。でも年齢的な部分もあるかと思いますが、自分に子どもができたら一変したのです。

だからこそ、子どもがいてよかった、子どもがいるからこそ楽しい事があるという意見も伝えていかないと、少子化は進む一方だと思います。これからも体験者として子どもが居る人生の良さや幸福感を世の中に届け続けていきたいです。




第3部終了



第1部「生死をさまよう出産」はコチラから



第2部「奇跡へと導いた面会」はコチラから

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【ご紹介】

■中本さんの著書:「56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました-生死をさまよった出産とシニア子育て奮闘記-」(ワニブックス) 

■産経新聞と産経ニュース(sankei.com)で、月に1回エッセー「息子は4歳 還暦パパの異次元子育て」を連載中。



インタビュー/ライティング:森山 千絵