産前産後のお母さんやそのご家族へ、出産に関する体験談をお伺いするインタビュー企画。これからお母さんになる方やそのご家族には、不安・悩みも多いと思います。子育ては十人十色ですが、誰かの経験を知ることで選択肢が少しでも増え、悩みの緩和に繋がると思い、先輩たちの実体験をお届けします。
第8回目としてお話をお伺いしたのは長谷川 Sさんです。(ご本人のご要望によりイニシャル表示とさせていただきます。)
新卒で外資系企業に就職し、40代までバリバリのキャリアウーマンとして過ごされてきたSさんは、40代で第1子と第2子を出産します。産休中にも食事法や教育について学ぶなど積極的に活動されているSさんです。
仕事に情熱を燃やしていた20‐30代から一変、40代で周囲の友人達が急に結婚し親になっていきました。その変化に自分はこのままでいいのかと考え直し、子どもいる人生を考え直します。予想していなかった帝王切開や子どもに対する夫の変化についてお伺いしました。
<プロフィール>
長谷川 S<S Hasegawa>
東京都出身、在住。2000年早稲田大学商学部卒業。同年に外資系IT会社へ就職。2006年に結婚、2007年に不動産業界へ転身。住宅のプロモーションやマーケティングを経て現在はイベント企画・運営等を担当。育児休業中に食育や教育についての知識を深める。
プライベートでは40代に長男、次男を出産。
第1部:産前
友人の妊娠、人生を再構築
私に合っていた、帝王切開
森山:妊娠が分かるまでにはどのような経緯がありましたか
Sさん:外資系の会社で仕事中心の生活をしていた29歳の時、夫と出会い結婚しました。周囲の友達や同僚も独身が多く、みんな仕事に情熱を注ぎ働いていたので、私も「結婚したから妊娠」という道はあまり考えていませんでした。
仕事にプライベートに充実した日々を送っていましたが、ふとこのまま子どもがいない生活でいいのかと思う時が何度かありました。
そんな想いを抱いたまま30代後半に差し掛かり、思いきって夫に相談しました。しかし起業したての夫には「赤ちゃん」という選択肢はなく「2人が容認しないのに妊活をするのも違うのかな」と思い、その時は仕事に打ち込みました。
しかし、いよいよ40代が目前に差し掛かかると周囲で結婚・妊娠をする友人が急に増えたんです。きっと高齢出産という妊娠へのリスクが高まる年齢が近づいていたので、みんなも少し焦ったのかもしれません。それまで一緒にご飯や休日を過ごしていた友人達は親になり、家族と過ごすようになりました。一緒に遊びに行く場所も時間も変わり、私の休日の過ごし方も一気に変化しました。
周囲の影響が大きかったのもありますが、私も40代を目前に、もう一度このまま子どものいない人生を過ごすのかどうかを考え直しました。
そして出した結論は「やっぱり子どもがいる生活を送りたい」。その想いを夫に相談し、妊活を始め、有難いことに1年を待たずして妊娠しました。
森山:親になると子ども中心の生活になるため、周囲との関係性も変わっていきますよね。
妊娠中は身体への変化はありましたか。
Sさん:つわりなどの体調変化も特に見られず、産前休暇直前までフルタイムで働きました。
安定期も順調に過ぎたので、妊娠後期には週3-4日の頻度で友人や会社の人達と外食に行きました。「親になればこんなふうに夜出歩くことも出来ないだろうなぁ」と思い、それまでお世話になった人や友人達と大人の時間を楽しみました。
そんな生活を続けていたせいなのか、足が信じられないくらいにむくんでしまったんです。これまでの人生で見たことないくらいの太さになってしまって、普通の靴が入らないくらいになり、週1で妊婦も受け入れてくれるマッサージに通っていました。それが妊娠中に唯一つらかったことですね。
森山:胎児や羊水で体重が増加している中での足のむくみは大変でしたね。
分娩はどのように進んでいったのでしょうか。
Sさん:予定日を過ぎても産まれる兆しは全くありませんでした。
実は、母から私を産んでくれた時の話を何度も聞いていたのです。予定日を3週間過ぎても産まれてこず、陣痛で4日間も苦しんだと。「遺伝していたら嫌だな」と思いながら妊娠中は過ごしていたんですけど、やっぱり同じようになりました。
予定日を過ぎ41週の時に促進剤やバルーンを使い、陣痛を促しました。しかし何をしても陣痛が来なくて、42週目になり「帝王切開しましょう」とお医者さんから説明されました。
親戚にも帝王切開をした人はいないし、噂で聞く「帝王切開は大変」というイメージがあったのですが、早く出産したい気持ちが勝り日程を決めて、いざ手術となりました。
帝王切開当日は、あらかじめ時間が決まっていたので夫も立会うことができ、手術自体は10分ほどで無事に終了しました。突然始まって、予想以上にあっと言う間だったな、と言うのが正直な感想です。お医者さんの腕もあると思いますが、術後の経過もよく、歩行の練習も早くから始められ、退院時には普通に歩けていました。
「帝王切開は大変」というイメージからだいぶ印象が変わりましたね。予想していた陣痛の苦しみもなく、夫も仕事で忙しい中立ち合い出産ができたので、私にとってはよかったのかなと思っています。
森山:旦那さまも出産に立ち合えてよかったですね。
産まれて初めてお子さんの顔を見た時はいかがでしたか。
Sさん:息子を抱っこさせてもらった時、自然と涙がこぼれたんです。私は淡泊な性格だと思っていたのに、涙がこぼれた時は自分でも少し驚きました。「安堵感」もあったのだと思います。純粋に嬉しかったですね。
それと驚いたのは夫の変化です。出産に立ち会うまではさほど子どもに関心がなかったんですけど、入院中からよく抱っこして可愛がっています。自分の面影を随所に感じるのが嬉しいようで、こんなにも人は変わるものなのかと驚いています。
第1部終了
■第2部「家族みなに好影響を与えた食事変化」はコチラ
■第3部「自分時間を確保する大切さ」はコチラ
インタビュー/ライティング:森山 千絵